スピーカー衰退奮闘記(2) 

――前回の続きです。

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箱を開けてみたら、
ほぼ同じ形のスピーカーが出てきた。
色、形、大きさ、スイッチの位置、何から何まで、
先日音が出なくなった、¥25800のスピーカーそっくりである。

通販で購入する際には何となく、
「ああ、最近こんな感じのスピーカーが主流なのかな」ぐらいに思っていたが、
主流というより、音が出なくなった手持ちのスピーカーの、
劣化コピーというか、パチモンというか、
同じような仕様でただただコストを下げたものが、
¥4999で売っていた。それを買ってしまったらしい。

スイッチ類の位置はほぼ同じだが、
こちらは漆黒の筐体に僅かな凹凸のみの表示である。
明るい場所で凝視しないとスイッチの位置は判別できない。
これでは薄暗い、あるいは真っ暗な寝る前の環境では操作できまい。

一応電源を入れてみる。
前のスピーカーよりもさらなる爆音で、
「ラ♭ドミ♭ドーっ!」という音が三角波らしき音で轟き、
「ラーミーっ!」とBluetoothが繋がる。
音声ガイドはなさそうだが、
そんな操作音までまねしなくていいのに。
著作権避けのためか、フレーズは変えてある。

Bluetoothで音を出してみる。
「こぼー!」という音である。
価格が¥4999だったので、
音質は¥25800のスピーカーの5分の1ぐらいは覚悟の上だが、
ただ単に低音質なのではなく、強い癖のある音。
そして、音量調節が、前のものよりさらにやりづらい。
高い方よりも、明らかに音が大きいのだ。
Bluetooth使用時、最小音量にしても、
これでは音量が大きすぎて睡眠用に使えない。
スピーカーを壁面に向けて裏返してみる。
スピーカーの指向性が狭いようで、
さらにさらに「こぼー!」という音になる。
これほど癖のある音では「何となく音が鳴ってる」状態は実現不可能だ。

ライン入力に入れてみる。
おっ、歪まない。高域が大いに追加された。
それに、ライン入力なら、音量調整がかなりの小音量まで調節できる。
これなら、どうにかこうにか、
「寝る前になんとなく音楽が鳴ってる」が実現できるかもしれない。
それにしても、この「こぼー!」という音の特徴をどう表現したらいいかと思い、
一応、この文章を書いているノートパソコン内部で、
イヤホンでモニターしつつ、プラグインのEQで似たような音を作ってみた。
大ざっぱに言って、パラメトリックEQで、
・300Hzを19dB上げる
・1KHz近辺をベルカーブ2.5Octで-16dB下げる
以上がBluetooth時の音の感じで、ライン入力はこれに、
・7KHzを10dB上げる
が加わる感じとなる。
もちろん測定したわけでもないし、
「こんな感じの音」とEQでささっとやってみただけなので、
全く主観的な再現なわけだが、
音の知識が多少ある方なら、
「こぼー!」な感じがお分かりいただけるだろうか。

そして、驚くべきは「光」である。
充電中に赤いLEDが鋭く光るのは、まあありそうなことだが、
電源が入っているときに光る青いLEDが、
「キーホルダー型のLEDライト」並の明るさである。
そして、Bluetoothを使用中、その光がずっと、
点滅しているのである。
真っ暗な部屋でBluetoothを鳴らすと、
部屋全体がSF映画の緊急事態シーンのような明滅である。眠れない。

さて、ここまで出た問題を対処する。
・Bluetoothは使わない。ライン入力のみとする。
・全く見えない電源スイッチには目印に白いカバーアップテープを貼り付ける。
・充電LED、電源LED両方共カバーアップテープで目張りする。
こうして、「寝る前になんとなく音が鳴っててほしい」という用途に、
まあ使えないこともないが、何となく納得いかないスピーカー、
が出来上がった。
黒い筐体が白いカバーアップテープまみれで、
見苦しいことこの上ない。

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実はもう一つ、スピーカーを同時に購入した。
電源を使わないパッシブスピーカーで、
スマホのアウトに挿して、そのまま鳴らすもの。
電源を使うアクティブスピーカーだからこんな目に遭うのではないか、
という予測もあって調べたら、安価なものがネットにあったのだ。
500円玉ぐらいの口径のスピーカーが2個並んで、
一つの薄っぺらい筐体に入っており、
その筐体からケーブル無しで直接端子が出ている。
枕元のスマホの位置とスピーカーの位置を調節するため、
延長ケーブルも同時購入した。
スピーカーは¥953。延長ケーブルも似たような値段。
こういうものがちゃんと鳴れば、
アンプ回路がないのだから、末永く鳴らしていけるだろう、
と思ったのだが、だめだった。
どうだめな音なのか、描写する気にもなれない。
使用しているスマホのスピーカーが、
じつはあれでも相当に(もちろんイヤホン分岐後に)、
EQ等で調節されていることがわかる。
普段、「鳴ってるうちに入らん」と思ってるスマホのスピーカーだが、
実はあれはあの体積の中で極限までいい音であろうとした音なのだ、
ということがよくわかる。耐久性も含め、原価も相当なものなのだろう。
通販サイトで目にした「スマホのスピーカーのほうがまし」という評価は、
知ったかぶりの誤評価などではなかったのだ。

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と、2種類のスピーカーを試行錯誤し、一段落した後に、
鳴らなくなった方のスピーカーメーカーから、
バッテリー交換依頼メールの返信が来た。
長文のテスト手順である。
・無充電で48時間放置
・再起動(◯ボタンと●ボタンを同時に長押ししながら
 電源ケーブルを抜くなど、両手を使っても難しい手順が含まれる)
・初期化の方法(×ボタンを10秒長押しなど)
・ファームウェアのアップデート(専用アプリをPCにインストール)
これらを全部やってダメだったらもう一度メールをくれ、との事。
有償でもいいと言っているのだが、バッテリーは交換させたくないらしい。

音すら出ないものを、
ネットオークションで“ジャンク”として売るのは、
ジャンクと明記したって気が引けるし、手間もかかる。
仕方なしに、上から順に作業をしていいく。

再起動後だったか、初期化後だったか、忘れてしまった。
音が鳴り出した。
何とライン入力の歪みも相当に改善している。
ファームウェアアップデートまで行かずに、
ライン入力の歪みまでが改善されてしまった。
(でもまだ低音がだいぶ歪んでいるけれど)
これはどういう仕組みなのか?
バッテリーの寿命ではなかったのか?
試しに、フル充電してから、AC給電をしない状態で、
2日間寝る前に鳴らしてみたが、
バッテリーはまだ100%である。
(初期化によって復活した音声ガイドが「バッテリーは100%です」と叫んでいる。この言葉は本当なのか。)

要するに、どういうわけだか、あらかた治ってしまった。
新しいスピーカー2種類の購入と格闘は、
無駄になってしまったらしい。

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パッシブスピーカーは一聴して駄目だったので、
枕元から早々に引き上げてしまったが、
今、宿泊先の私の狭い枕元には、
・一応治ったがいつまた壊れるかわからない高価なスピーカー
・そのACケーブル。(今後は普段は繋がないこととする)
「こぼー!」という音で、白いテープが沢山貼り付けてある新品スピーカー
・そのACケーブル。(こちらも普段は繋がないこととする)
・ラインケーブル。(新しいスピーカーはライン入力でのみ使うこととする)
という品々が散乱している。
実に見苦しいし、煩雑である。
「寝る前に、小音量でなんとなく音楽が鳴っててほしい」
という軽い希望には見合わない時間と労力である。

当分この散乱状態で、高い方のスピーカーを使い続け、
バッテリーが再びおかしくなったら、
すぐにその場で「こぼー!」のライン入力に乗り換える、
という計画でいる。

高い方のバッテリーが再びおかしくなり、
新しい方の「こぼー!」に耐えられなくなったら、どうするか。
先週ぐらいまではなんとなく、
「秋葉原にスピーカーユニットを買いに行って、
百円ショップのタッパーにでも取り付ければ、
用途には充分な音が出るのではないか」、などと思っていたのだが、
パッシブスピーカーではスマホはうまく鳴らないらしい、
という経験をしたので、この計画の実現性は低い。
まあ、今のもの、その次のものが駄目になってからという、
3手先の話なので、まだまじめに考える時期でもなかろう。
第一、スマホの機種変をする頃には、
スマホにイヤフォンアウトがなくなってる可能性だって、
無いとは言えない気配になってきた。

(有線のイヤフォンが使えないスマホなど荒唐無稽に思っていたが、
現にあるので先のことはわからないものだ。
無線転送だとヘッドフォン・イヤフォンの駆動に電源が必要となる。
このことは改善されまい。
ということは、スマホからイヤフォンがなくなっていく代わりに、
イヤフォンアウトがついてそれなりのDAコンバーターを搭載した
携帯音楽プレーヤーが再興し、スマホと同期可能となる、
などという可能性も想像してしまう。
Bluetoothだって、必ず音質劣化する仕様なのだから、
そのうち44.1KHz/16bit、2Trackぐらいのデータ量なら
非圧縮での近距離無線規格だって、できないとも限らない。
なんとなく鳴らしておくだけでも、音質を気にしなくても、
BluetoothとCDの非圧縮では、はっきりと体調まで違ってくる。
要するに、この混迷はまだまだ続くはずだ。)

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いずれにせよ、私たちはついつい、
テクノロジーの進化をどう生きるかを話しがちだが、
テクノロジーの退化をどう生き抜くかが切実だ。
必要なものごとははっきりしている。
そのはっきりしたもの、当たり前にできていたことが、
マジョリティーの消費行動によって、できないことになっていく。

スピーカー衰退奮闘記(1) 

テクノロジーの進化をどう生きるかよりも切実なのは、
テクノロジーの退化をどう生きるかである。

デジタル技術の飛躍的な進化に伴い、
コンシューマーオーディオの退化、
とりわけスピーカーの退化が深刻であることは、
音好きの皆様は存じのことと思う。

どこまでも低価格になり、どこまでも音が悪くなっていく。

別に、そういうものでまじめに音楽鑑賞しようとは思わない。
ちょっと鳴らす程度の用途なら、
今やプロ用・アマチュア用の境界がすっかり曖昧になった、
DTM関連のスピーカーを使い回せばいいだけだ。
まるっきりコンシューマー用のものを使用することは、もう、滅多にない。

その“滅多にない”使用例にもかかわらず、
意外と頻繁かつ非常に重要な使用例というものがあって、
私の場合それは、
「寝る前に非常に小さな音量で何かかけて眠りに入る」
という、大切な生活習慣である。

自宅の場合、¥12800のCDラジカセを20年使って、
数年前にCDとBluetoothが鳴らせる「パーソナルオーディオシステム」
とかいう呼称のものに買い換えた。
まあ「小さい音でなんとなく鳴ってればいい」という用途なので、不満はない。

問題は、「出先」というか、「宿泊先」。
私には毎週数日間泊まり込みで働く際に、
決まって眠るベッドがあって、
その枕元で、どうしても、小さい音で、音楽を鳴らしながら眠りたい。
かつてはポータブルCDプレーヤーを使っていたが、
スマホを使うようになってからはスマホの音を再生したい。
音質に贅沢は言わないが、
スマホのスピーカーよりはいい音であってほしい。
なので別途スピーカーを使用したい。
ただ、そのベッドの枕元は非常に狭く、スピーカーを置くとしたら、
大きさは縦横がスマホ程度、奥行きは長くても人差し指ぐらい。
つまりギターエフェクターぐらいの大きさのものを縦に置くぐらいだ。
それ以上の大きさのものは、物理的に置けない。

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記憶に残っている最古のスピーカーは、
確か2000円台のものだったと思う。
(それ以前のものもあったが、もはや思い出せない。)
いわゆるアクティブスピーカー。
コンシューマー用語だとPCスピーカーという呼称になるのか。
ステレオミニプラグでポータブルCDプレーヤーや
スマホのイヤホンアウトからの信号を受け付ける。

音質そのものは全く申し分ない。スマホのスピーカーよりずっといい。
が、非常にしばしば、断続的に、
「み!みみ!みぃー!みー!」
という甲高いノイズが出るのだ。
これは絶対音感で言う「ミ」ではなく、非常に独特な音色で、
「音程の全く変化しないミンミンゼミみたいな音」
が断続的に相当な音量で鳴り続けるのだ。

家電量販店で買ったのだが、
これはどういうことなのか、とその品物をネット通販サイトで調べてみると、
「音がいい」と星を5つ付けている人と、
「なんか変な高周波のノイズが鳴ってる」と星を1つ付けている人とがいる。
評価だけを読むと「高周波ノイズ」と言っている人が神経質みたいに
読めてしまうが、これはどうやら個体によって、
「みー!」とノイズが出るものがあるということらしい。
ということは、これを宿泊地から持ち帰り、
保証書を探し出して家電量販店に持ち込み、あるいは郵送し、
交換してもらったとしても、
交換されたものも「みー!」と言ってる可能性がある、ということだ。

そこまで手間ひまをかけたくもない。
私は、軽い気持ちで、寝る前に、小音量でなんとなく音楽をかけていたい。
そう望んでいるだけなのだ。

しばらく使ったら音が落ち着くのではないかと思って、
数ヶ月使ったが、「みー!」という音は治らないので、
修理交換ではなく、新たに買い換えることにした。

音質はほぼ問わないから枕元で小音量で音楽を鳴らしたい、という用途で、
今度は通販サイトを物色すると、
その通販サイトがプライベートブランドらしきものを立ち上げており、
やはりステレオミニプラグで入力するアクティブスピーカーで、
「ベストセラー」と冠してあるものがある。
値段も¥999と安い。購入して、宿泊地まで持って行く。
音も「枕元でなんとなく鳴ってればいい」という価値観なら全く申し分ない。
なんだ。これで充分じゃないか。
――と、半年ほど快適に過ごしていたら、そのスピーカーから、
「みー!」
という音が轟き始めた。

全く別のメーカーのもので同じノイズということは、
今どき、非常に安価なアンプ回路というのは、
なんだかよくわからないが「みー!」というノイズが出てしまうもののようだ。
音質が悪いのは価格で覚悟の上。「サー」というノイズも価格的に許す。
だが「みー!」と鳴っていたら、
それはスピーカーの用をなさない。

だが、999円で半年使えた。
同じのを買えば999円でもう半年持つだろう。安いものだ、
と再び購入しようとしたら、ない。
半年で生産が終了したらしい。
じゃあ同じプライベートブランドで同じ価格帯のものが新商品で出てるはずだ、
と探したが、ない。
どうやら安物のスピーカーの世界は、非常に頻繁にモデルチェンジしたり、
ブランドそのものが消失したりするものらしい。

またスピーカー探しの旅に出るのか。

なんだかばかばかしくなってきた。
私は、軽い気持ちで、寝る前に、小音量でなんとなく音楽をかけていたい、
そう望んでいるだけなのだ。
探す手間ひま、宿泊地まで持ち運ぶ手間ひま、
想像だにしない「みー!」などというノイズを聴きながら眠らなければならない日々、
何もかもばかばかしい。

音質にこだわらないなどと思っているから却ってだめなのではないか。
高価なものを買えば妙なノイズもないのではないか。

そう思って、価格にこだわらない決心をして、
「大きさの割に非常な高音質」を謳う小型スピーカーを購入した。
価格は¥25800。
いくらなんでもここまで高価なら問題なかろう。
ステレオミニプラグでライン入力も受け付けるし、
Bluetoothで鳴らすこともできる。

電源を入れてみる。
爆音で英語音声が轟く。
操作法が音声ガイドである。
取説のような紙を見ると、
取説をダウンロードできるURLが書いてある。
PDFの取説を見ながら、音声ガイドを日本語にし、
一通り初期設定を終えたら音声ガイドをオフにする。
取説を見ると、この音声ガイドは各種言語を取りそろえてはいるが、
音声ガイド自体の音量を下げることはできないらしい。
夜中なら近所から苦情が来そうな音量である。

まず、ライン入力に音を入れてみる。
烈しく歪んでいる。
なんとなく歪みっぽいのではなく、
過大入力の歪みの音。ギターアンプのゲインを上げたような音。
取説の「よくある質問」を読むと、
「ライン入力の音が歪んでいる場合、出力が大きすぎることが考えられます」
などと書いてある。
ヘッドフォンアウトのボリュームを下げてみる。
ミキサーからのアウトにして出力ゲインを下げてみる。
極限まで出力側の音量を下げたとき、
ギターアンプで言う「クランチ」ぐらいの歪みにまで歪みが減る。

有り体に言えば、この会社の「よくある質問」の回答は、
「これはBluetoothで使うことを前提に作ったので、
ライン入力の回路はうんと原価を下げました。手を抜きました。
もはや音の体をなしていませんが、ここはひとつ、
当社のせいではないと言い張らせていただきます」
という風にしか読めない。

腹立たしく思いながらBluetoothをつなげる。
こちらは全く歪まない。
だが、「小さいのに大音量」がウリの品物のせいか、
自分が望む小音量にはなかなかならない。
最小の音量でも、枕元用にはだいぶ音が大きいのだ。
アナログのように細かいレベル調整ができるものでもない。
色々試行錯誤して、鳴らしうる最小の音量にし、
さらにスピーカーを裏返しにすれば、
どうにか寝る前の枕元でもうるさくない小音量にできそうだ。

それにしても、電源をオンにする時や、
Bluetoothが繋がるとき、切れるときに、
三角波らしき音で一々、
「ファファっ!」「ラレドっ!」
といった音楽的な操作音が轟くのはどうしたらやめられるのか。
取説を調べてみたら、この操作音はオフにもできないし、
スピーカーの設定音量と無関係に同じ音量で必ず鳴る仕様らしい。
消せないのだ。

疲れ果ててベッドに向い、寝る直前に電源を入れると、
瞬時にBluetoothが繋がり、
「レミラっ!」とかいう爆音が轟くのを聴かなければならなくなった。

可能な限り小音量に設定する、
あきらめて大音量の操作音に慣れる、
不自然に強調された重低音に慣れる、
これに数ヶ月かかった。

が、まあこれだけお金と手間をかけたんだ、
これ以上はもうどうしようもなかろう。
たかが枕元でなんとなく音楽が鳴っていたい、というだけのために、
これ以上時間と手間とお金を消耗したくない。

ところでこのバッテリーはどういう仕組みなのだろう?
まあいい。枕元に置きっぱなしなわけだから、
バッテリーを長持ちさせる工夫など必要ない。
バッテリーがリチウムだろうと鉛だろうとニッケルだろうと、
バッテリーがダメになったってACアダプターで動けばいいだけだし、
バッテリーを長持ちさせるために寝る前に思考を巡らすなど、
本末転倒も甚だしい。
深く考えないためにこういうものを買ったのだ。
ACアダプターは繋ぎっぱなし。バッテリーについて考えない事にしよう。

1年経ったら、そのスピーカー、音が出なくなった。
ACアダプターをつながないと、一切動作しない。
ACアダプターをつなぐと、アラート音が轟き、バッテリーマークのLEDが赤く光って、
あとは一切動作しない。音も出ない。
つまり、このスピーカー、内蔵バッテリーに寿命が来ると、
ACから給電されても動作しないらしいのだ。

一応サポートサイトを見てみて、
ACアダプターを使っても音が出ないときのリセット法なども試してみたが、
症状は変わらない。

いくらなんでも使えないから捨てる値段とは思えない。
普段は信頼しているメーカーでもある。
一応、バッテリー交換依頼のメールを出しておいたが、
数日経っても返事は来ない。
サイトの作りからして、見るからにサポートする気が無いのがわかる。
プロの現場でどんなに愛されているメーカーであっても、
コンシューマー相手だと一気に対応が悪くなるのは、
しばしば経験するところである。

腹立ちまぎれに、別のメーカーのBluetoothスピーカーを購入した。
値段は¥3999。ネット通販で、今日届いた。
箱を開けてみたら‥‥

―――(長いので次に続きます)
追記/補足を読む

シンセを作ってもらった 

私がどれくらい物事をよくわかっていないかというと、つい最近まで、
「モジュラーシンセで買い揃えたものは、単体シンセに統合できるはずだ」
と思っていたぐらいである。

つまり、モジュラーシンセをある程度購入し、
どういうフィルター、どういうオシレーターが、
どのように結線されていて、
どのようにスイッチ切り替えになっていれば、
自分にとって使いやすいかがはっきりすれば、
どこかのガレージメーカーに持って行って、
「このモジュールとこのモジュールを内部結線して、
このモジュールとこのモジュールはスイッチ切り替えにして、
コンパクトなケースに収納させて、軽くして下さい」

と言えば、さらっとやってくれるのだろうと思っていた。

かなりモジュールを買い込んで、
基板の奥行きに悩んだりしながら、
ある日突然、
「あ、無理だ」
と理解した。
それぞれのモジュールの基板や、それぞれのパネルを、
その基板やパネルに依存したつまみの位置をずらしながら、
1枚の基板なりパネルなりに「さらっと統合」、できるわけがなかろう。

エフェクターの修理かなんかで、楽器屋の店員さんが
「中、基板だから」
と言ってた意味がやっとわかった。
(逆に言えば、この歳までよくわかっていませんでした。)

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が、結線が少ないに越したことはない。
接点が少ない方が事故も減るし、
面積も減らすこともできる。

そういうわけで、以前当ブログで紹介した「パッチシンセ」だが、
あれを使って自分が何をどうしたいと思っているのかが、
自分で大体わかってきたので、
思い切って打診してみて、あれを元に、
自分専用のシンセを作っていただいた。



相当「自分がどうしたいのか」を理詰めで落とし込んでも、
やはり思ったようにはいかないもので、
何度かメールのやりとりや、音のやりとり、動画のやりとり、
そして宅配便による実物のやりとりが続いた。
かなりご無理をお願いしてしまったようにも思う。
JMT SYNTHさん、ありがとうございました)

10/1のライブで何をやるのかは、
現時点ではまだ追い込みに入っていないので、
「使います」とは断言できないが、
舟沢が今までやってきたことの“ある部分”は、
これでかなり小面積・小結線で可能となった。

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思った通りのことをするとういことと、
思いがけないことを引き起こすということ。
その相克を、統合不可能なまま統合しようと突き進んでいくことが、
いつも難しいのです。

知識と経験の“横”に遍在するもの  

昔の話をする。
何年だったか忘れたし、
細かいところは記憶が途切れ途切れになっている。

1980年代末〜90年代初頭あたり、
私は、とあるコンサートに行った。
今で言う「インストアライブ」のようなもので、
普段はアートショップ+CDショップ+カフェのような空間で、
テーブルや椅子を片付け、
コンサートをする、ということだった。
来日して演奏するのは、ミュージシャンというよりは、
今風に言うと「サウンドアーティスト」というべきか、
音響彫刻や、彫刻に非常に近い自作楽器を作り、
ご自分で即興演奏なさる方であった。

私は、かなり早く会場に着いた。
何かがおかしい、と思った。
その会場は行き慣れた場所だったのだが、
いつもと変わらない。
いつものようにアートショップがあり、
いつものようにCDショップがあり、
いつものようにカフェがあって、
いつものように、お客さんがくつろいでいる。
つまり、何の準備もされていないのだ。
日にちを間違えたか、とも思った。

やがて、目の前で不思議な光景が繰り広げられた。
コンサート開演の、1時間前だったか、30分前だったか、忘れた。
とにかく、時間が迫って、ライブ目当てのお客さんが集まり始めた時点で、
カフェのテーブルが片付けられ始めた。
そして、その、お客さんが入り始めた段階で、
PA(音響)の搬入が始まった。

当時の時代としても、
コンサートをするためには、
PAをセッティングし、
リハーサルをしてからライブをやるのは、
当たり前だったと思う。
大規模なコンサート、小規模なコンサート、
ライブハウス、TV番組、カラオケ大会、学園祭、
どこへ行っても、「100%のぶっつけ本番」というのは、なかった。
当時の常識として、PAは、
・搬入
・セッティング
・回線チェック
ここまではどこでも必ずやるもので、
回線チェックの後に行うサウンドチェック、リハーサル、ゲネなどを、
どのぐらい入念にやるのかは、
状況によって変化するものだった。
(ソロライブならサウンドチェックが数時間の場合もあるし、
TVの収録であればサウンドチェックが数分のこともある。
演説や講演会であれば、リハ以降がない、ということもありうる。)

なので、お客さんが入るのと同時にPAの搬入が始まる、
というのは、当時としても非常に不思議な光景であった。
開演時間が近づくにつれ、
スピーカーが設置され、マイクが並べられ、
配線されていく。
いかに簡易なコンサートといえども、
これでは回線チェックもできないし、
音量も決められないし、
ハウリングを起こさない調整も、
何もかも、できないではないか。
コンサートをやるなら、カフェを早めに閉じて、
サウンドチェックをしなければならないはずなのに。
いったいこれは何が起きているのだろう。

唖然としているうちに、開演時間になった。
どういう司会進行だったか詳細は忘れたが、
概ね、そのアーティストの「音響彫刻作品」のスライドを上映し、
ご本人の解説で見ていくのが前半。
そこに、通訳の方や、見解を述べられる日本の作曲家の方もおられたと思う。
そして、後半、そのアーティストの演奏が行われる、
という流れであった。

かなり早い段階で、頻繁にハウリングが始まった。
当たり前である。
ついさっきマイクを並べて、スピーカーを置いて、
配線したばかりではないか。
誰がどうしゃべるのか、
マイクと人との距離をどうするか、
そもそも自作楽器がどういう音を出すのか、
何もかも確かめていないではないか。
その自作楽器は、非常に小さな音のものであったし、
マイクの距離や角度を決める時間すら、与えられていない。
会場的にスピーカーの位置も選択の余地はないし、
これではどんな優秀なエンジニアでも、
ハウリングなしに1発でコンサートを成立させるなんて、
できっこない。絶対に。

ところが、鳴り続けるハウリングに、
来日なさったアーティスト氏も、非難の眼差しをPA席に送っておられる。
やがて、同席していた日本の作曲家の先生が、
憤激に駆られた表情で、席を立った。
PA席の方角に何か怒りのしぐさをして、
メインのスピーカーを、ご自分の手で、
力いっぱい「ぐるん」と90度傾けてしまった。

当時の常識としても、
いかに主催者側であっても、音楽家であっても、
音響の、しかもメインのスピーカーの向きを勝手に変えてしまうのは、
ありえないことであった。
第一、お客さんに向いているスピーカーを
本番中に勝手に動かされたら、
PAさんは益々責任ある音が出せないではないか。

心配してPA席を見ると、
PAオペレーターの人は、
怒っているのか、悲しんでいるのか、絶望しているのか、
あるいはそのすべてか、
読み取れない沈鬱な無表情で、うつむいていた。

コンサートが終わり、家に戻り、
1日経ち、1週間経ち、1年経つうちに、
遅発性ショックのように、事態が飲み込めてきた。

誰も知らなかったのだ。

アートショップ経営の主催者サイドも、
普段音響彫刻をしているアーティストさんも、
同席していた作曲家先生も、
あの場にいた全員が、
どんな小規模なコンサートであっても、
小さなライブハウスでも、カラオケ大会ですら、
絶対にやらなければならないPAの手順が存在すること、
それをやるためにはあらかじめ早めにショップを閉じて、
その手順を踏む時間を作らなければならないこと、
音に関係している人ならプロアマ問わず絶対に知っているはずのことを、
PAを手配した人も、当日のスケジュールを組んだ人も、出演している人も、
全員が、知らなかったのだ。

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あれから何十年か経って、
“ありえない無知”というものが、
この世に遍在するらしいことを、
私は非常にゆっくりと、学んできた。
あの時、PAさんに非難の眼差しを向けていた音響アーティスト氏も、
コンサートが初めてだった筈がないし、
怒りの表情でスピーカーを90度曲げた作曲家の先生だって、
並大抵の方ではない。
運営していた方々だって、並大抵の知見の方々ではなかった。
それでも、コンサートの常識を、全員が、知らなかった(としか思えない)。

制作・プロデュースということを考える。
ものすごい高学歴の方が、
スタッフのお弁当の手配にすら汲々とするのは、
想像もつかないほど広範かつ瑣末な知識と判断と行動が求められるからだろし、
相当な経験を積んだプロデューサー、出演者同士であっても、
相手を「常識的にありえない」といって、トラブルになるケースも耳にする。
知っておかなければならないこと、やらなければならないことが、
この世の中には、想像もつかないほど、多いのだ。

私自身、相手を「こんなこともわからないだなんて」と思うこともあれば、
逆に「お前、ほんとに何にもわからないんだな。」と言われて、
何年考えたって“何を言われたのかすらわからない”こともある。
結局は「自分にはわからないことがたくさんある」という自戒を胸に、
自己教育していくしかないのだが、
おぞましいことに、
「自分にはわからないことがある」という謙虚な思考につけ込んで、
他人に責任を押し付ける事で世の中を生き抜いている人すらいる。

何年経験を積んでも、
一歩横にずれれば、その経験は、通用しない。
もう充分経験を積んだ、と思っても、
その経験は数年で通用しなくなる。

それに、芸術家の多くが体験的に知っている事だろうが、
作品に集中すると、周囲のことがみるみる煩わしくなったり、
そもそも認識できなくなったりするものだ。
(俳優は役作りの最中に照明の消費電流について考えられないだろうし、
演奏家はライブ本番前に受付の釣り銭の心配をしたくない。)

人にお願いする、つまりアウトソースするにしても、
何をどこにどうお願いするのかの知識と経験が必要になり、
その状況とノウハウはみるみる変化していく。

――つくづく、生きていくのは難しい。
追記/補足を読む

はじめてのEURORACK 

現在、ライブに使用しているいくつかのアナログシンセやオシレーターを仲介するために、
EURORACKで売っているいくつかのモジュールと、
EURORACKのケース2つを、買いました。



初めて見る方には何がなんだか判らないでしょうし、
詳しい方からみれば、
「何というつまらないモジュールか」、
と言われそうな並びになっています。

ここ数年、アナログシンセ、
とりわけモジュラーシンセを楽器とする人間にとって、
EURORACKブームとどう向き合うかについては、
意外なほど難しい様々な問題を内包しています。

舟沢の場合、
そもそも自分が何を掘り下げようとしており、
どのような音楽を発生させようとしているのか、
そのためには何が必要なのか、
今、不自由に感じていることは何か等々を自問自答し、
手持ちのシンセのCVやオーディオ信号を、
仲介することから始めてみよう、と考えるに至りました。

そのうえで、自分がライブを行うにあたって、
あると助かるであろうと思えるもの、
あると音の可能性が調和的に広がるものなどを選び出し、
一つの小さいEURORACKケースと、
もう一つの大きめのEURORACKケースに設置し、
ライブを行う際に、どのような配置、配線で臨むのかを決め、
使用することに決めたモジュールを小さい方にはめ込み、
小さい方のみを従来のシステムに追加して運搬する、
そういう心づもりであります。

――計画通りにいくかどうかは、
やり込んでみないと解らないのですが。


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EURORACKという素晴らしい規格とどのように向き合うか、
様々な難しい問題を抱えていると書きました。
その全ては、ここに書かないことにいたします。

一つだけ、わかりやすいところで書きますと、
価格の問題があります。
この写真に写っている、
非常に少ない、仲介を中心に考えたモジュールと、
低価格なケース2つだけで、
「iPad買ってきてヴァーチャルモジュラーシンセ一式をインストールするくらい」のお金がかかってしまいました。
EURORACKで「とりあえず普通のモノシンセとして一通りの事ができるセット」みたいなやつを購入するにも、
DTMを始めるための機材やソフト一式が揃いかねないお金がかかってしまいます。
Youtubeなどを見回しますと、世の中には壁一面EURORACKという方も大勢おられるようですが、
全ての人がそんなにお金持ちというわけではありませんし、
多ければ多いほどよりよい音楽が作れるとも限りません。
全く逆に、モジュラーであれば、
自分にとって不要な要素をいくらでも削ることができるということもまた、
魅力と言いうると思います。

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舟沢ごときのアドバイスなど片腹痛いでしょうが、
「興味はあるが、とりあえず何から始めたらいいか」
とお考えの方がおられましたら、
舟沢としては、まず、非常に安価な、
KORGのmonotronあたりを購入して、
「自分にはアナログの音が必要か」
を確かめてみるのがいいかと思います。
monotronはEURORACKでもなければCV-GATEもありませんが、
ポルタメントの滑らかさ、
LFOを速めていったときに起きること、
レゾナンス(peak)を上げていったときに起きることなどを体験してみて、
「これはデジタルでは確かに出せない。そしてこの音は自分にとって必要だ」
と思える方は、アナログを始められたらいいと思います。
(向いてなくても「失敗したな」と諦められる価格だと思います)

そして、モジュラーに進むのなら最初に何を買うかなのですが、
やはり、最初から一台である程度完結する、
CV-GATE拡張可能な、セミモジュラー的な何かを購入して、
音作りの途上で、「これがもっとこうなっていたら」と思うようになってきたら、
EURORACKなどを購入して、CV-GATEでつないでいけば良いのではないかと思うのであります。
この「最初の1台」ばかりは、やりたいことによって違いが出過ぎますので、
「これはどうでしょう」とお勧めする知識も度量も、舟沢にはありません。各自でお調べ下さいませ。
ただ、これはあくまで舟沢の個人的見解ですが、
はじめの一歩としていきなりEURORACKで揃えてしまうのは、
お金持ちでなければ無謀なのではないか、と思うのであります。
(無論、全てをEURORACKで揃えてしまえば、電源まわりが簡略化され、
ライブでもセッティングや撤収が早くなります。
予算の潤沢な方は、EURORACKから揃えて、
他の規格のものに拡張なさっていってもいいだろうとは思います。)

あと、CV-GATEといっても色々な規格があるようで、
CV-GATEでやりとりができて一通りの機能があるシンセとして有名な、
KORG MS-20 miniなどを購入してから、
EURORACKに拡張しようとしますと、
MS-20miniのCV-GATE規格とEURORACKのCV-GATE規格が、
かみ合わなくなります。
その場合、beatnic.jpさんあたりが、
規格のつじつまを合わせるガジェット
を制作・販売しておられるので、そういうものを購入しつつ、
つじつまを合わせていくことになろうかと思います。

いろいろ、むずかしいですね。
規格は決まってる。決まってるけど、実は色々違いがある。
規格は揃っている方がいいけど、
やりたいことは全員違うと。

そういうわけで、各自、ご自愛なさりつつ、
時々は交流したり情報交換したりしつつ、
各自の道を歩むのが宜しいかと存じます。
追記/補足を読む