精神と市場 

「神秘主義は絶えず新たに起る」と言ったのは宮沢賢治だったろうか。

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なぜ「神秘主義は絶えず新たに起る」かというと、それが絶えず滅ぶからであって、なぜ絶えず滅ぶかというと、起るたびにそこに市場が出現するからである。
それはR・シュタイナーが「賛同者による妨げ」と呼んでいたものの一種であろう。
また、シュタイナーは、人間の精神生活と人間の経済生活(そして国家生活)を、分節すべきだと説いた。
何らかの精神運動や芸術運動、芸術傾向のようなものは、いったん生起すると、市場(それはもちろん経済原理に属する)の出現それ自体によって衰退してしまうという、大きなジレンマを抱えている。
なぜ市場の出現によって衰退するかというと、そこに本質をもたないものが、大量に、遥かに洗練された形で追従してくるからでである。
つまり、高度に精神的なものは、ほとんどの場合、本来、経済原理・競争原理に、そぐわないのだ。

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R・シュタイナーの恐るべき読みにくさは、意図されたものだろうか。

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公開当時、A・タルコフスキーの上映館は、人で溢れかえっていた。
そして、9割がたの観客は、寝てた。
タルコフスキー本人が知ろうが知るまいが、タルコフスキー映画の上映の運営は、9割がたの「無意識的な人々」の入場料が支えていたし、タルコフスキーの映画は、その大半が、タルコフスキーの映画を理解しない人民の血と汗と涙の予算で出来ていた。
ああいう時代は、もう来ないかもしれない。

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これを書いている現在、ネット上に、「現代美術とはコンテンツをプレゼンテーションする方法の事で、つまり自作をいいものであるかのように上手に紹介することそのものが現代美術だ」、と教えている場所だか人だかがいるという怪談が出回っている。
真偽はわからないが、ありそうな話だと思う。
そして、それが“怪談”のように話題になるくらいには、美術はまだ健全だともいえる。

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そういえば、R・シュタイナー自身が、どこかで、「社会問題は永遠になくならない」と言っていた気がする。どこで読んだか、思い出せない。

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もちろん、悪いことばかりではない。
精神的な行動に対する、原価が下がった。
かつて、才能に溢れる若い人々が猛烈に安上がりの映画を撮るムーブメントで、
「一千万映画」というのがあった。
いま、一千万より、きっと、ずっと安い。
これを書いている現在、
ある程度精神性を保った作品を、ある程度運営として成立させているのは、
一人~数人であることが多い。
一人~数人が動ける範囲内であれば、
高度に精神的なことも、しばしば可能になりつつある。
“運営”は困難なままだし、
“精神だけがない洗練された類似品”に埋もれがちではあるが、
いずれにせよ、その時代、その状況で、やれることをやるしかない。

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やれることをやるしかないのだが、
やれることしか“しない”ということが、
しばしば怠惰であるかのような強迫観念にとらわれてしまう。
できないことをすべきなのではないかと。
その強迫観念にとらわれてじたばたしてしまうが、
じたばたしても仕方ないと、「じたばたしない努力」すらしてしまう。
そういった、じたばたするまいと葛藤すること自体も、
自分の歩みの一歩一歩である、ともいえなくもないが、
そういった“自分の歩み”という考え自体が、
ある種、自己肯定的な怠惰ではないか、という強迫観念も生じる。

この堂々巡りを自分で見据えることは、禅的である。
坐禅というのは、機嫌よく気分よくちょっとリラックスして坐る、
というのとはちょっと違ったものだと、舟沢は思っている。
そういった坐禅の紹介の中に、「市場」的な何かを感じてしまうのだ。
そうかといって、如浄禅師(道元禅師の師)みたいに「尻の皮が剥けても坐れ」というのも、中庸的ではないとも思っている。
つまりは、時代や世代や状況の中で、
やれることをやっていくしかないのかもしれない。

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こういった「ぐるっと回って一周」するような文章は、
あまり趣味ではなかったのだが、
最近、思考が非直線であることが多いし、
魂の中で起きていることをうまく言語化出来ない。
時代のせいかもしれないし、歳のせいかもしれない。

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